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【その29】芝居のプランについて

どうも、演出最中の阿久根です。

今日は、ちょっと、芝居のコーディネートについて書こうかと思います。

えー...

役者はセリフを貰うと、まずそれをどうやろうかと考えます。
その時にいくつかのパターンがあるんですね。

本に書かれたセリフをそのまんまやる...
どこの誰でも、どんなシロウトでも、そのセリフはこんな風だろうとコーディネートする。

それを僕は
Aプラン
と呼んでいます。

要するに、ありきたりで当たり前で、それ以上もそれ以下もない、
誰でもがやれる無難な芝居のことです。

だいたい老舗どころの劇団なんかは、これが上手いです。
こーゆー当たり前の芝居が巧みなんですよね。

で、

ソレに対して、ちょっと変化球といいますか...
普通の人が本を読んだかぎりじゃ、「こんな感じだろう」と思うところを、
変えてくる。

「あ、そっち?」と思わせる芝居を僕は
Bプラン
と呼んでます。

普通とは違う芝居なのにシーンにはマッチしているというヤツです。
妙に印象に残る芝居をする役者がいるでしょ?
あれはだいたいこのプランに長けていたりするんです。

Aプランが巧みな役者、Bプランが得意な役者、どっちも長所があるんです。

Aプランが巧みな役者は使いやすいんですよね。
こっちがイメージすることを決して超えないから、どんな役でも与えられる。
だから脇役にはもってこいなんです。
だけど、どこにでもいる。
その人が病気で倒れても代わりの役者はだいたい見つかります。

Bプランが得意な役者は、客を惹きつけます。
みんなが思うイメージを超えてくるから、興味が尽きないんです。
これは主役になれる役者です。
こんな人をキャストしていたら、もう作家はこの役者にアテ書きで本書きますね。
でも、その空気を出せる役者はホカにいないから、彼に倒れられると代わりはいません。

Aプランはクセがなく、Bプランはクセが強い。
Aプランが上手い役者は演出がヘボでもカタチにはしてくれる。
Bプランが得意な役者は演出が無能だとその芝居を殺してしまう。

Aプランは後天的努力でどんだけでも上手くなる多数派。
Bプランは先天的嗅覚を持ち、個性が色濃い少数派。

良い演出とは、Aプラン役者もBプラン役者も使いこなせる人を言うんだと、
僕は思ってるんです。

まあ...AプランBプランという言い方も僕が言ってるだけなんですけどね。

僕は、本の構成上、凄くクサクサになってしまう歯の浮くセリフ
ケツが痒くなってしまうシーンをどうしても入れなきゃいけなくなる時が
あるんですよね(笑)
そんな時は、Bプランで切り抜けるんです。

客のイメージした通りのシーンを固める場合は逆に、役者にAプランを要求します。

昔、大映の作るドラマシリーズ、
山口百恵さんの出ていた「赤いシリーズ」や「スチュワーデス物語」、「スクール・ウォーズ」なんかは、A プランの塊ドラマで、Bプラン芝居をする役者は1人もいません。
その影響を受けている韓流のメロドラマは、やはりAプランだらけですよね。
2時間モノのサスペンスもAプランで芝居は構成されています。

あまり深く考えさせずに統一されたイメージを与えるには、やはりAプランでないといけません。

Bプランが出きる役者さんは、性格俳優と呼ばれたりします。
そして、その特徴としてはAプラン芝居することを嫌います。
で、安い飲み屋で演劇論をぶったりするという特徴があります(笑)

でも...

不思議な人もいます。

役を与えて、セリフを言わせると
「ありきたりにこうするんじゃないかなー」と、思ってたら、まさしく、そうしてくるのがAプランなんですけど、堂々としたAプランなのに、妙なおかし味があって誰のモノとも違うセリフを吐く役者が稀にいるんですよね。

誰のものとも違っていればそれはBなのに、セリフは紛れもないAのほうを吐いている...

本当は、そこでBプランを求めているのに、どんな素人でもそうしてしまうAプランをやりきっているから、ダメ出ししてセリフをBプランに変えさせようと思うんだけど、妙におかしくて、心地よさがあって迷う時があって...

結局、「これでいこう」と思わされてしまう...

これをCプランと呼んでます。

Bプランが得意な役者はある程度計算が出来てる人が多いけど、この人は、当たり前のセリフを言っているつもりで誰とも違う印象を与えている天然でして...

これは天才ですよね。


ああ...長くなってしまったので締めますけど、「月と陽」もAとBの芝居が散りばめられています。

そういうところも観てくださいね。

作演出 阿久根知昭


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