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【その3】 日蝕について

日蝕051103~1.JPG
どうも、作演出の阿久根です。

『月のしらべと陽のひびき』では重要な【箏】に関する話は、企画段階で資料をいっぱい集めた大塚さんに任すとして、僕はそれ以外のことを書くことにします。

と、いうことで、今回は、物語に関わる自然現象【日蝕】について。

この物語の最後に流れる曲は、姜琰の奏でる「月のしらべ」と、甘沢の奏でる「陽のひびき」が重なるようになっています。

この月と陽が重なることが、大きなポイントだったりするのです。

箏奏者の河原さんに、物語用の曲を作ってくれと頼んだら、しっとりとした旋律の曲があがってきたので、それを「月のしらべ」というタイトルにして姜琰のテーマ曲としました。

「月のしらべ」という曲が出来上がって、それを聴きながらイメージを膨らませて書いた物語だったんですが、甘沢のテーマも欲しいと思って、河原さんに「陽のひびき」という曲も作ってくれと発注しました。
そして、最後、それ2つが入り混じるようにしてほしいとムリを言ってみたら、彼女は

「えーッ!」

と言いましたが、多少フテつつもちゃーんと作ってくれまして(ありがとうございました)。
そこで、月と陽の2人の重なりということで、物語の中に日蝕も盛り込もうと考えたワケです。

で、その日蝕の話なんですけれども、この現象は古代中国では極めて政治に関わってくるものだったりします。

太陽が欠けてゆくのは、とてつもなく大きな龍が太陽を飲み込もうとしていると考えられていました。

太陽は王のシンボルだったりします。

なので、日蝕は、王の政治が悪いからそれが起こると思われたり、不吉な前兆と思われたりしまして、そのために年号が変わったり、王が戦をするのを止めたりしてました。

それで、古代の権力者たちは、それを予測しなければならなくなり、天文観測や占星術が発達するのです。

てなワケで―――
2人が出逢うシーンは日蝕の起こった日にしました。

日蝕を不吉と思った人々が商売を止めてしまい、閑散とした市場で甘沢と姜琰は互いを発見するのです。

まあ、まだ物語を知らない人もいるだろうから、詳細を語るのは止めにします。


で、発注を受けてしまったものの、まだ僕が一行も書いてないころ......

別仕事で大塚さんと鹿児島に行った新幹線の中で

「ねー書いた?書いてくれた?」

と言われて、

「まだいろいろデータが足りないから書けません」

と返したんです。

で大塚さんが「ナニが足りないの?」って訊くから、

「昔の中国の日蝕に関するデータですよ。そこを調べて物語の時代を設定しますから。そういうの調べられるソフトがあるから、それ使って時代を絞り込まないと」

って言いました。
そしたら...

「うんじゃ、分かった、それ俺がやっとく。それよりさ、琴と琴が会話をするんだようぅぅ。こっちで『あなたを愛しているわ』って言うとね、こっちじゃ『俺もお前を愛しているよ』なーんて言うんだようぅぅぅ、琴で。早く書いてよぅぅぅ...」

結局、日蝕の調査なんて全然やってくれませんでした。

まー...物語作りは、そこらへんが苦労しましたね...

作演出 阿久根知昭

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