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【その2】 編鐘という楽器について

こんにちは

作演出の阿久根です。

前回、弓から発展した琴が、さらに発展して箏(そう)《日本ではこれでこと》になったというお話をしましたが、主人公の楽士の甘沢(かんたく)が扱っていた

【編鐘(へんしょう)】

という楽器について説明しとこうと思います。

編鐘080423_0854~01.JPG

大小60もある鐘を叩いて音を出す楽器です。
音域は5オクターブくらい。

編鐘の歴史は古く、西周朝初期...と書いても分かんないですよね。
えー...今より約3000年前の出土に見られます(日本は縄文時代でした)。

だいたい大きな王の陵墓なんかを調査すると編鐘は出てきます。
ま、「そんだけのシロモノだった」と言いたかっただけなんスけどね。

ちなみに、『月のしらべと陽のひびき』は戦国時代(前403-前221)の末期を舞台としてます。

で、

『月のしらべと陽のひびき』の劇中―――
主人公の甘沢が、父の代から王侯貴族に仕える楽士であったとなっています。

そして、「おもに国の行事などで演奏していました」とあるのは、編鐘がそこいらで奏でられるような楽器でなかったことを窺わせています。

そのセットの大きさと部品の多さ、そして高価さが、全然手頃な楽器ではないんですね。

これも劇中で、

「編鐘は、青銅で鋳造されていて、大小60個もある鐘を木槌で叩く楽器で、財力がないと作れず、甘沢ほどの一楽士が所有するなど、とても無理な楽器でした」

と出てきますが、実際、編鐘の鋳造には大量に青銅を使うため、国王や諸侯、豪商などの凄い金持ちしか作れませんでした。

三国時代の魏の武王(曹操)なんて、あまりにも青銅を使う量が多いため禁止令を出してます。
そのため、それ以後は廃れてしまいました。

まー、甘沢くらいの楽士が所有できるワケがない。
したがって、その仕えていた主が滅んでしまえば、もう失業。
編鐘に触れることさえ許されない身となります。

なので、新しい楽器を探していたのですねえ......

で、箏(こと)が出てくるワケです。

編鐘の説明は企画構成の大塚さんにもしたりしてたんだけど、彼はそこにはあまり興味がなく――

「うん、分かった、任せる。それはいいから。それよりさ、琴と琴が会話をするんだようぅぅ。こっちで『あなたを愛しているわ』って言うとね、こっちじゃ『俺もお前を愛しているよ』なーんて言うんだようぅぅぅ琴で。いいじゃんコレー、よくないコレー?」

って熱弁&ウットリ。

まー...物語作りは、そこらへんが苦労しましたね...


作演出 阿久根知昭

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