FM 福岡 FUKUOKA

2021年3月27日「一通の手紙」

江戸時代の昔の米沢藩で、農家の年老いた母親から嫁ぎ先の娘宛てに出された
手紙が今日に伝えられています。

「ひと筆申し上げまいらせ候」と始まる手紙には、干した稲の取り入れの際に夕立が来そうで気をもんでいたら、通りかかったお侍が手伝ってくれたこと。
御礼にお餅をと、届け先を聞いたところ、お城の北の御門と言われ届けたことが書かれています。

武士が農作業を手伝う、ほのぼのとした日常が伝わってきますが、実はこの手紙、母親に起きた大事件を伝えるものでした。
なんと城中に招き入れられた母親を待っていたのは藩主の上杉鷹山だったのです。
手紙には「お侍どころか、お殿様であったので、腰が抜けるばかりで、たまげ果て申し候」と心底驚いた様子が綴られています。

幼くして上杉家の養子となった鷹山は17歳で藩主の座に就くと、破綻の危機にあった藩を立て直すため、大倹約の号令を発して率先して質素な生活を実践し、自ら田畑を耕して農民の手本となり、重臣達が反旗を翻せば断固たる態度で闘い抜いて藩再建に道を拓いた名君です。
農作業を手伝った鷹山は再建の道半ばの28歳。
若き藩主が重んじた農民への慈しみの心を、一通の手紙が時を超えて今に伝えています。