2025年3月のテーマ 桜鯛 ①
ふくおか グルメ手帖。
この番組では、毎月様々な食材を因数分解。
雑学からプロに聞く扱い方、簡単レシピを紹介していきます。
今月の食材は、「桜鯛」です。
一般的に桜鯛とは、産卵前の春に揚がる色鮮やかなピンク色をした真鯛のことを言います。同じように産卵時期のものを「ムギワラダイ」、秋に獲れるもっと赤色が強いものを「モミジダイ」とも言い表します。この赤い色は、ことわざ「海老で鯛を釣る」に出てくるように、鯛が好んで食べる海老の色素、アスタキタンチンによるものです。
ちなみに、標準和名が「サクラダイ」もいて、こちらは体長15cmくらいで桜の花びらのような模様があるハタ科の魚で、滅多に揚がりません。
話を真鯛の桜鯛に戻しますと、普段は浅瀬の陸地に近いところで生活し、温度が下がると沖合の深い場所に移動して冬眠します。それを繰り返して、ドンドン大きくなっていきますが、年齢は鱗を見れば分かります。まるで木の年輪のように1年毎に線が入っていますよ。
さて、この鯛という名前ですが、平安時代には「平魚(タイラウオ)」と呼ばれていたのが省略されて「タイ」になったと言われています。また、漢字で魚偏に「周」と書くのは、日本のどこでもいつでも獲れることからあてられました。
それだけ簡単に獲れるのに、めでたい魚になっているのはなぜでしょう?
実は、寿命が長いのです。通常、15年から20年、長いものでは40年も生きますし、色も紅白で姿や形が美しく、脂が腐りにくいので味があまり劣化せず、まさにお供えにピッタリ。名前も「めでたい」と、ひっかけられますよね。
なのに、鯛は日本以外ではあまり評判が宜しくない魚です。
雑食で食い意地がはっていることから、フランスでは「強欲な下魚」、中国では「不吉な魚」と言われ、アメリカでは肥料にされています。残念ですね。
話を日本に戻しますと、恵比須様が抱えていたり、二匹の小鯛の腹を合わせて藁で結び、神棚や竈の上に掛ける懸鯛や、塩焼きしたものを正月中にはお箸をつけずに見ているだけという「にらみ鯛」もあります。
そんな鯛ですが、「鯛のタイ」って、知っていますか?
鯛だけでなく骨の硬い鰯や鯵にもあって、胸びれを動かすときに使う骨なのですが、真鯛のタイが、魚の中で最も美しい形をしています。
江戸時代には、「鯛中鯛(たいちゅうのたい)」と言い、めでたい鯛の中にある鯛ということで、縁起ものやお守りとして珍重されたそうです。
皆さんも鯛を食べる時に探してみませんか?