2024年4月のテーマ そら豆 ①
ふくおか グルメ手帖。
この番組では、毎月様々な食材を因数分解。
雑学からプロに聞く扱い方、簡単レシピを紹介していきます。
今月の食材は、「そら豆」です。
北アフリカや南西アジアが原産と言われるそら豆は、世界最古の農作物のひとつで、最初はエジプトやインドで栽培され、その地域を拡大。
15世紀までヨーロッパで「豆」と言えば、「そら豆」を指していたくらい広がりました。
今では世界中で食べられていて、代表的なもので、エジプトのターメーヤ。ゆでたそら豆、玉ねぎなどを香辛料で味付けし、ペースト状にして揚げたコロッケで、中東では「ファラフェル」とも言われています。スーダンにはそら豆を煮たスープである「フール」、イタリアにはチーズをそえたおつまみで「ファーベ・ペコリーノ」、スペインは乾燥そら豆と豚肉を煮込んだ「ミチロネス」、そして、中国では代表的な発酵調味料「豆板醬」の材料になっています。
日本には奈良時代に中国から伝わり、本格的な栽培が始まったのは明治に入ってから。国内で最も栽培されているのは、粒の大きさが一寸(約3㎝)あることから「一寸そら豆」と言われるものです。他にも、「お多福豆」、「仁徳一寸」などがあります。
また、都道府県別でみると鹿児島県が国内生産のシェア、およそ25%を担っていて、1位。そして、千葉県、茨城県などが続いてきます。
「そら豆」は、サヤが上を向いて空を指して育つことから名付けられました。そして、「お多福豆」という品種があると言いましたが、これは豆が「お多福」に似ているからです。なんとも縁起が良い話が多いのですが、昔のヨーロッパでは、そうはいかなかったようです。
実は、そら豆には死者の魂が宿るとされ、いけにえとして捧げられていたので、今でもイタリアでは、キリスト教の記念日にそら豆の形をしたお菓子を作って食べる習慣があります。有名なのは、古代ギリシャの大数学者であるピタゴラス。とにかく忌み嫌って食べませんでしたし、弟子にも食べることを禁止して徹底的に排除したので、周りの人からも馬鹿にされるほどでした。でも、ピタゴラスの死にもそら豆が関わってくるので、もしかしたら自分の死を予言して嫌っていたのかもしれません。
ところで、そら豆の実のへこんだ部分に真っ黒な線がありますが、これはサヤと実を結んでいる部分で、正式には「珠柄」、通称「お歯黒」と言います。お歯黒と言えば、江戸時代の既婚女性の象徴のようなもの。江戸時代にはよく、そら豆を茹でてザルに上げ、うちわであおいで冷まして食べていたと言いますから、その愛情を「お袋の味」のように感じ取って、名付けられたのかもしれません。
さて、さやで売られているそら豆の量の目安ですが、1kgあたり約20本、中身の豆だけになると約300gとなり、豆の数は50個前後となります。料理をする際の参考にしてください。
さあ、今が旬のそら豆。今夜の食卓にでもいかがですか?