FM 福岡 FUKUOKA

2023年11月のテーマ 蕪 ①

ふくおか グルメ手帖。
この番組では、毎月様々な食材を因数分解。
雑学からプロに聞く扱い方、簡単レシピを紹介していきます。
今月の食材は、「蕪」です。



蕪は、アフガニスタンから地中海沿岸の南ヨーロッパあたりが原産と言われていて、荒れ地でも育ちやすいため、飢えをしのぐために世界的に広がりました。あのハロウィーンでジャックオーランタンに使われているのは南瓜ですが、アメリカで流行る前は、蕪だったのです。それぐらいヨーロッパでも歴史ある野菜なのですが、日本には弥生時代に大陸から伝わったようで、「日本書紀」にも登場します。

蕪は、古くから日本各地で栽培されたことで、地方品種が多いのも特徴です。
主な品種で小かぶ、天王寺かぶ、聖護院かぶを始め、福岡の博多据えかぶ、滋賀の万木かぶ、山形の温海かぶなど、日本全国北から南までおよそ80品種もあります。
ただ、この日本の蕪ですが、関ヶ原を境に西がアジア系、東がヨーロッパ系に分かれます。農作物のルートで言えば、中国、朝鮮半島などを通って日本に入ってくるのが一般的ですが、誰がどうやってヨーロッパ系の蕪を日本に持ち込んだのでしょう?これは、大きな謎として残っています。

さて、蕪は大根と似ていますが、大根はダイコン属、蕪はアブラナ属で味も蕪のほうがあまり辛くなりません。また、大根の表面には小さな根がありますが、蕪はツルツルです。大根の花は白色ですが、蕪は黄色です。ただ、料理法は似ていて、どちらも生で漬物にしたり、卸したり、炊いたりします。



ところで、蕪という漢字は、草かんむりに「無」と書きますが、これはなぜでしょう?
実は、「蕪」という漢字には、「草で地面を覆いつくす」という意味があります。
つまり、蕪の葉が生い茂って、地面が見えないようになる様を表しているのですね。
まさに、荒れ地でも育ちやすい野菜にぴったりの漢字です。

また、蕪はいつも食べる根の部分だけではなく、葉の部分にもたくさんの栄養があります。酸茎菜や野沢菜も蕪がルーツですし、万葉集にも「あをな」として登場するくらい、葉っぱも重要なんです。だから、家で蕪を料理する際は、葉っぱまで余すところなく頂いて下さい。

私は、根っこと葉を両方使ったパスタを作るのが大好きです。
今夜にでも、蕪を食べてみてはいかがですか?