FM 福岡 FUKUOKA

2023年7月のテーマ うなぎ ①

ふくおか グルメ手帖。
この番組では、毎月様々な食材を因数分解。
雑学からプロに聞く扱い方、簡単レシピを紹介していきます。
今月の食材は、「鰻」です。



鰻は、ウナギ目ウナギ科ウナギ属に属する魚です。
ウナギ属の魚は、世界に現在19種が知られていますが、一般的に食べられているのは、ニホンウナギ、ヨーロッパウナギ、アメリカウナギの3種類です。
鰻が他の魚と違う最大の特徴は、海で産卵し、川や湖などの淡水域に戻ってきて成長することです。鮭とは逆ですね。
ただその実態は謎だらけで、近年になっていくつかのことは分かってきました。
まず、日本の沿岸からおよそ2,500kmも離れた西マリアナ海嶺付近、深さ3,000mから4,000mの場所で産卵し、生まれたての頃は自分で泳ぐことができず、浮遊しながら育ちます。
それが、漂って河口付近の浅瀬に来る頃に、シラスウナギへと成長し、あの黒い鰻へとなるのです。

ところで、日本では万葉集にも登場するくらい、鰻を食べる文化は古いです。
で、その頃からスタミナが付く食材だったんですね。
でも、あまり数が獲れなかったので、貴族や武家の食べ物だったのですが、江戸時代になって、関東に都が移った辺りから変わっていきます。
関東は湿地帯が多いため、まさに鰻天国。獲り放題に獲れたので、庶民も口にするようになり、醤油の普及と共に、蒲焼きが大流行します。
この時の蒲焼きは、串に刺したものを食べていましたが、デリバリーやテイクアウトする人も多かったんですね。で、最初は温めた糠で包んで運んだんですが、食べる時に糠の匂いが移って美味しくなくなってしまいます。ということで、炊き立てのご飯で包んで運んだら、御飯も美味しく頂けたということで、「うな重」が誕生したというわけです。



鰻の扱い方ですが、関東と関西では違います。
関東は背から開いて頭を取って蒸した後にタレ焼きしますが、関西では、頭をつけたまま腹開きですし、蒸しません。
関東が背開きになった理由は、武士が切腹をイメージするからだとか、蒸して柔らかくなった身が崩れないようにだとか言われています。
じゃあ、なぜ関西は腹開きなのかというと、商売人なので、「腹を割って話そうよ」ということらしいです。
また、福岡県は関西風の焼き方が多いですが、柳川地方では、焼いた後にせいろ蒸しする工程が入ります。

さて、そんな鰻ですが、天然と養殖で旬が違います。
天然は、秋にたっぷり栄養をとって産卵しようと海に降りてきたものが、脂がのって旬となります。
養殖は、「飛び」という、冬に養殖池に入れたものが出荷される初夏が旬になります。
ということで、夏の土用丑の日に鰻を食べようとなるわけですが、これは、平賀源内が考えた説が有名ですよね。
丑の日には「う」の付く食べ物を食べて無病息災を祈願しようという話から鰻がハマったわけですが、鰻はスタミナ食材というだけではなく、ヌルヌルして掴めないので、難に捕まらない魔除けとしても用いられてきました。縁起も担げるんですね。

さあ、今年の夏の土用の丑の日は、7月30日です。
鰻を食べてスタミナをつけて、今年の夏を乗り切りましょう!