2023年6月のテーマ とうもろこし ①
ふくおか グルメ手帖。
この番組では、毎月様々な食材を因数分解。
歴史雑学からプロに聞く扱い方、簡単レシピを紹介していきます。
今月の食材は、「とうもろこし」です。
とうもろこしの原産地や起源は、はっきりとしていません。
実は、祖先にあたる野生のとうもろこしが見つかっていないのです。
有力な説として、原産地はメキシコ、ボリビア辺りの中南米で、起源は7,000年ぐらい前ではないかといわれています。
それが世界に広まったのは、15世紀末にコロンブスが持ち帰ってからです。
それは瞬く間に広がり、中国など東アジアへも伝播しますが、日本に伝えたのは、ポルトガル人です。当時は粒が硬い品種だったので、煮たり、粉にすることが多かったようです。
とうもろこしの漢字(玉蜀黍)には、「粒が玉のような蜀黍(モロコシキビ)」という意味があります。この「蜀黍(モロコシキビ)」は、日本古来の黍(キビ)に対する三国時代の中国の国「蜀」の黍ですが、時代を経て「モロコシ」とだけ言うようになりました。
さらに中国が唐の時代になり、そこから「モロコシ」のようなものが来たということで、「トウモロコシ」と言われるようになりました。2つの時代の中国の国の名前が入っているなんて、面白いですね。
さて、とうもろこしは起源が分からないだけではなく、不思議な部分がたくさんあります。例えば、トウモロコシの粒の数は必ず偶数になります。これは、生長過程で、細胞が2つに分裂するためで、輪切りにすると分かりますが、1つの節に2つの粒がくっついています。また、私たちが髭と言っているシルクは、1本ずつ粒につながっています。つまり、1髭1粒というわけです。
ところで、先月などはよく見かけましたヤングコーン。
これは、1本の苗に数本のとうもろこしがなりますが、1つの実に栄養を集中させるために先に摘んでしまったものです。こちらは芯も柔らかいので一緒に食べることができます。皮付きで焼くと美味しいですよね。
とうもろこしは、茹で方によって、食感や味が変わっていきます。
最初のポイントは、皮の薄い部分だけを数枚残して茹でること。これがラップ代わりになります。そして、甘さ重視なら水から茹でて、シャキシャキした食感重視ならお湯で茹でます。茹で上がったら、塩水に10秒ほど漬けると、水分が抜けにくくなります。あとは皮を剥いて、ラップをして保存です。冷蔵で1、2日、冷凍で2、3週間持ちます。
さて、とうもろこしを昔から食べていたマヤ文明の伝説では、人間はとうもろこしからできたとされています。現在、とうもろこしは私たち人間が食べるだけでなく、家畜の飼料となったり、コーンスターチ、水あめ、コーン油、お酒の原料、プラスチック、糊、洋服やタオルの繊維、燃料など、多岐にわたって使われていて、まさに私たちは、とうもろこしに囲まれた生活をしています。伝説だけではなく、今も人間はとうもろこしからできているのですね。