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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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2020年2月15日「江戸時代の観劇」

日本の伝統芸能のひとつ、歌舞伎。
江戸・寛永年間に初代 猿若勘三郎が江戸で初めてとなる常設の芝居小屋「猿若座」を造りますが、江戸時代の歌舞伎は現代とはずいぶん違ったものでした。

まず芝居小屋では火事を恐れて蝋燭1本たりとも使わず、興行は自然光がある昼間だけ。朝6時から始まり、夕方5時まで続く1回興行だったのです。
またエアコンなどない夏の芝居小屋は大勢の観客がひしめき合う蒸し地獄。
そこで人気を博したのは本物の水を使った「本水」という出し物で、役者が豪快に動けば客席にもばしゃばしゃ水が飛んできて、やんやの喝采です。

そして何よりも現代と違うのは、歌舞伎を見る観客たち。
何しろ夜明けから日が暮れるまで長丁場の歌舞伎を静かに黙って見続けることはできません。
後ろを向いて知り合いとお喋りをしたり、食事をしたり酒を酌み交わしたり、芝居をろくに見ていない人もたくさんいたのです。
さらに当時は拍手という習慣がなく、その代わりに大声で役者を応援したり、芝居がひどければ罵声も浴びせていました。

舞台に立つ役者にとっては失礼なことですが、そんなうるさい客席を黙らせて振り向かせるだけの力が必要だったからこそ、歌舞伎の演出や演技力は磨かれていったのです。