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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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2020年1月11日「フランツとフレデリック」

音楽の世界で「初見演奏」という言葉があります。
初めて見た楽譜をその場で即座に演奏することで、高度な演奏技術が要求されます。

古今東西で天才的な初見演奏をしたのは「ピアノの魔術師」といわれるフランツ・リスト。
超人的なテクニックで一世を風靡していた若きリストは、パリで同時代の作曲家たちと交遊し、彼らの作品を本人の前で初見で弾きこなしていました。
ワーグナーのオペラの楽譜は頭の中でピアノ用に編集しながら完璧に演奏。
メンデルスゾーンのピアノ協奏曲も完璧に弾きこなし、さらにもう一度弾いてみせた際には楽譜にない即興をふんだんに盛り込み、メンデルスゾーンを呆れさせました。

ただ一度だけ、リストが初見演奏できなかった曲があります。
それは1歳年上の作曲家が作ったピアノ練習曲。
初見演奏に失敗したリストはショックを受けてパリから姿を消します。
そして数週間後に戻ってくると件の練習曲を見事に弾きこなし、作曲家を感動させました。

その作曲家とは「ピアノの詩人」と呼ばれたフレデリック・ショパン。
彼の作品には繊細で詩的な叙情性が溢れていました。
それは当時のリストの演奏にはなかったもの。
だからこそリストは初見演奏ができなかったのです。

自分にない才能との出会いと挑戦。
これを機にリストとショパンは友情を結んでいったのです。