2019年3月9日「命を慈しむ詩人」
明日3月10日は「みすゞ忌」。童謡詩人・金子みすゞの命日です。
『赤い鳥』などの童話童謡雑誌が次々と創刊された大正時代。その中で彗星のごとく現れたのが、金子みすゞでした。
明治36年に現在の山口県長門市に生まれた彼女が童謡を書き始めたのは20歳の頃。
4つの雑誌に投稿した詩がすべてに掲載され、童謡詩人の大家・西條八十に「若き童謡詩人の巨大な星」と賞賛されました。
自然とともに生き、小さな命を慈しみ、命なきものにさえ向けられた優しいまなざし。
金子みすゞは次々と名作を発表します。
しかしその生涯は決して明るいものではありませんでした。
23歳で結婚したものの、文学に理解のない夫から詩の創作を禁じられてしまい、さらには病気、離婚と苦しみが続きました。
ついには夫から最愛の娘を奪われないために自死の道を選び、26歳という若さでこの世を去ったみすゞ。
やがて彼女の存在や作品は忘れられ、いつしか幻の童謡詩人と語り継がれるばかりとなってしまったのです。
死後半世紀が経った頃、500点以上の未発表作品が発見され、全集が刊行されると、金子みすゞの作品群に再び注目が集まりました。
自然の風景をやさしく見つめ、優しさに貫かれた作品の数々は、21世紀を生きる私たちに大切なメッセージを伝え続けています。
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