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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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2017年9月16日「ネコの手を借りる治療」

18世紀になり、人間の体がどうなっているかを調べる解剖学によって近代医学が始まったとされています。
その近代医学の発展に貢献した一人が、イギリスの解剖学と外科医学の教授を務めたジョン・アバネシー。
動脈瘤における外腸骨動脈の結紮(けっさつ)手術の創始者で、血管を糸で結ぶ結紮は今日では手術を行う外科医にとって基本の技術になっています。
いわばアバネシーは外科手術の草分けなのですが、本人は「手術は外科の恥である」と公言してはばからず、緊急の場合しか手術をせず、症状によっては自然治癒に任せることが多かったようです。
そのことがまたアバネシーの名声を高め、彼の診察を求める患者は増える一方でした。
が、アバネシーの名を高めたもう一つの要因があります。
それはときとして、とんでもない冗談を言うこと。

ある真夜中に誰かがアバネシーの家の戸を激しく叩きます。
医者の家に深夜訪問するのは急患に決まっています。
でも、アバネシーは世の中のすべての医者同様、夜中に叩き起こされることが大嫌いでした。
ドアを開けると一人の男が青ざめて立ちつくし、こう叫びました。
「先生、大変です。早く来てください!息子がネズミを飲み込んでしまったんです」
するとアバネシーは眠そうにこう答えたそうです。
「どうってことはない。すぐにネコを飲ませなさい」