2017年8月19日「喧嘩するほど仲がいい」
『南総里見八犬伝』は滝沢馬琴が28年をかけて書き上げた大長編物語。
馬琴は江戸時代のベストセラー作家です。
そして馬琴が書いた数々の作品に挿絵を描いたのが、かの浮世絵師・葛飾北斎でした。
江戸時代の小説の挿絵は、作者がこういう絵を描いてほしいと絵師に指示するのですが、馬琴の絵に対する指示はこだわりが多く、厳しいものでした。
ところが北斎も絵師としての自信が強く凝り性だったので、馬琴の指示に従わず、自分の美学にこだわって描いたため、二人はいつも衝突していたのです。
たとえばある作品では、馬琴が書いた話の内容に関係なく北斎が勝手に狐の絵を描き、「これじゃ俺が狐にだまされているみたいだ」と馬琴が怒ったり、
登場人物が草履を口にくわえる場面があるので、それを絵にしてほしいと馬琴が頼むと、「そんな汚い絵が描けるか!だったら自分で実際に草履をくわえてみやがれ」と北斎が怒ったり。
とにかく衝突してばかりの滝沢馬琴と葛飾北斎ですが、二人が不仲だったかというと、そうでもありません。
引越し好きの北斎が馬琴の家に転がり込んで、4か月も勝手に居候していたこともありました。
面と向かっては喧嘩ばかりする二人ですが、お互いに本人がいないところでは、相手の絵や文章を誉め讃えていたのです。
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