2017年2月12日「リストの弟子」
作曲家としても有名ですが、超絶的な技巧を持つ最高のピアニストで「ピアノの魔術師」と呼ばれたのが、19世紀に活躍したフランツ・リストです。
彼はテクニックだけではなく、どんな曲でも初見で完璧に弾きこなし、その技巧と音楽性から「指が6本あるのではないか」という噂がまともに信じられていました。
リストの死後、彼を超えるピアニストは現れないだろうとさえいわれています。
そんなリストはまた、ピアノの指導者として多くの弟子を育てています。
しかも芸術家が演奏以外で収入を得ることを好まないとして、指導は無料。
指導内容もリストの演奏スタイルを真似させるのではなく、各人の個性を重視したスタイルを探求させた懇切丁寧な指導で、弟子たちの多くがその後、名ピアニストに育っていきました。
あるとき、リストの弟子だと偽って演奏している不心得者がいるという噂を耳にしたリストは、その人物を捜し出して呼びつけました。
呼び出された男は、リストに会うなり嘘をついていたことを謝ります。
するとリストは、「まあ、私にピアノを弾いて聴かせてください」と言ったのです。
男の演奏はあまり上手なものではなかったのですが、聴き終わったリストは、
「これで私が教えたことになる。さあ、あなたは明日からリストの弟子だと胸を張って言っていいですよ。」
と優しく励ましたそうです。
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