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提供:創価学会
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2016年4月10日「日本初の女性駅長」

いま鉄道の世界では運転士や車掌として多くの女性が活躍していますが、日本初の女性駅長が誕生したのは、大正4年のこと。

かつて関西に高野鉄道という私鉄がありました。
この鉄道の経営者は、小さな駅では社員ではなく一家族を雇って一駅を運営することを考えます。 一家で駅に住み込み、夫が駅長で妻が業務を補佐する仕組みです。

そんな中、大阪にある小さな芦原町駅に22歳のうら若き女性が駅長に就任しました。
黒い事務服にエプロンをかけた姿で毎日ホームに立っては挙手敬礼で列車を迎え、発車の合図をおくり、さらに出改札もこなすという一人勤務。
彼女の存在は沿線住民の間で人気を呼び、そのうえ乗客に親切だという評判から、遠方からわざわざ彼女を見に来る人や縁談を申し込む人も現れました。

ところが、彼女にはれっきとした夫がいました。
彼女とともに芦原町駅に住み、近くの会社に勤めるサラリーマン。
つまり、この夫婦は駅を運営する家族として選ばれたものの、昼間駅にいない夫に代わって妻が駅長に就任したというわけです。
彼女が既婚者と分かっても、沿線の人たちは日本初の女性駅長を町の自慢にしていたそうです。

それから100年後の現在、いまも南海電鉄高野線の駅として残る芦原町駅は、全国の小さな駅と同じように、無人駅。
女性駅長が活躍した面影はもうありません。