2016年2月7日「12歳のオリンピック」
オリンピックで日本選手の最年少出場記録をもつのは、女子フィギュアスケートの稲田悦子さんです。
1936年、ドイツで行なわれた冬季五輪に日本女子選手として初めて出場した稲田選手の年齢は12歳。
身長127センチの小学6年生だったのです。
周りの選手たちに比べてあまりにも小さいので、観客席の子どもがリンクに迷い込んできたのでは、と誤解されるほどでした。
稲田選手の競技ユニフォームは白のワンピース。
裏地は日の丸を意識した赤でした。
実はこの衣装は日本から持ち込んだものではありません。
当時の日本の洋服のデザインの水準は欧米に比べて劣っていて、彼女が日本から持ち込んだ衣装は見栄えが悪いものだったのです。
「これでは審査の点数に影響するのでは」と心配したのが、ベルリンの日本大使館。そこでベルリン駐在の日本婦人会の手で急遽仕立て上げた子供服を稲田選手に贈ったのです。
この衣装で試合に臨んだ稲田選手は、すらりと背が高い欧米の大人の選手たちを相手に、26人中堂々の10位の成績を収めます。
そのときの彼女のコメントは「みんな知らない顔ばかり。ダイコンやニンジンの中で滑っているみたいで気楽だった」というものでした。
ここから始まったオリンピックの日本女子フィギュア。
荒川静香選手がトリノ五輪で金メダルに輝くのは70年後のことです。
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