2016年1月24日「マンロー先生のクッキー」
北海道・日高山脈の麓に、「アイヌの聖地」と呼ばれる二風谷(にぶたに)という村があります。
昭和6年、この村に一人の年老いた英国人が移り住みました。
彼の名はニール・ゴードン・マンロー。
明治23年に来日した彼は横浜で医者として活躍する傍ら、アイヌの文化や世界観に惹かれ、その研究にも打ち込みます。
そして68歳でようやく、アイヌの聖地に暮らすという夢を果たしたのです。
マンローはアイヌの人々に向けて無料の診療所を開きます。
往診もこなし、暮らしの相談から農作業のアドバイスまですることもありました。
看護士の妻が作る「マンロークッキー」と呼ばれるお菓子をもらうために、子どもたちは嫌な注射も我慢したそうです。
マンローはアイヌの伝統的な結婚式や葬式にも招待され、長老たちから先祖伝来のしきたりや儀式、狩りの仕方や鮭漁の方法など様々なことを教えてもらい、それらを丹念にノートに記録していきました。
二風谷村のアイヌの人たちに慕われていたマンローですが、戦争が近づく時代になると村の外では「ガイジン」「スパイ」と囃し立てられ、石を投げられることもありました。
それでも彼は日本に留まり続け、昭和17年、アイヌの人々に見守られながら二風谷で息を引き取ります。
ニール・ゴードン・マンロー。
アイヌを愛し、アイヌとともに生きた唯一の人類学者です。
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