9/13「ドジな頑固者」
きょう、大相撲秋場所が初日を迎えていますが、昭和33年の秋場所初日、ちょっとした事件が起こりました。
結びの一番の取り組みに物言いがついたのですが、その協議に13分を費やしたのです。
その原因は、この一番を裁いた立行司19代式守伊之助。
物言いがつくと行司は審判たちの協議を粛々と見守るのが常識なのですが、このときの伊之助は、行司差し違えと判定した審判たちに向かって、真っ赤な顔で涙を流し、軍配で土俵を叩きながら自分の判定の正しさを主張したのです。
これを咎められた伊之助は、13日の出場停止という謹慎処分を受け、この一件は「伊之助 涙の抗議」事件として相撲ファンに語り継がれることになります。
それほどの頑固者だった伊之助はまた、ドジな行司としても有名でした。
取組中の力士のさがりを抜こうとして軍配の下げ緒がからみつき、そのまま両力士の腹の間に挟まっておろおろしたり、勝った力士のしこ名をど忘れして
「お前さぁ?ん」と勝ち名乗りを上げたり。
小柄な自分の身長を高く見せようと上げ底に細工した足袋を履くと、俵につまづいて土俵下に転落したというエピソードもあります。
そんな頑固な気質とドジな性分とのギャップが彼の持ち味だったようです。
やがて謹慎処分が解かれ土俵に登場した伊之助を、観客は万雷の拍手で迎えています。
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