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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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8/9「或る情報部員の思い」

長崎県美術館は、長崎ゆかりの美術はもちろんですが、スペイン美術の作品数は東洋一の規模を誇っています。
ピカソやダリなどスペイン絵画の数は500点以上。その基になったのは、須磨弥吉郎(すまやきちろう)という人が寄贈したコレクションです。

須磨は戦前の外交官で、昭和15年に特命公使としてマドリードに赴任。その仕事の傍ら膨大な数のスペイン絵画を購入しました。
その須磨コレクションは昭和45年に全国の美術館で巡回展示され、最後に回ってきた長崎に寄贈されたのです。
それにしても、秋田出身で長崎に何もゆかりがない須磨が、なぜ長崎に貴重なコレクションを寄贈したのか?
じつは戦前の彼の外交官とは表の顔で、裏では日本の内閣情報部員。つまりスパイだったのです。

彼はマドリードを拠点に欧米諸国の諜報活動をしていましたが、その過程で米国が原爆を開発して既に製造段階に入ったことをつきとめます。
そのことを彼は何度も日本政府に送り続けましたが、須磨の情報は生かされることなく、原爆は投下されたのです。

晩年、彼は広島、長崎の惨劇を防ぐことができなかった自分の複雑な胸中を周囲に漏らしていたといいます。
コレクションの安住の地を長崎に求めたのは、
須磨の長崎の人々へ捧げる鎮魂・・・レクイエムの思いだったのです。