3/8「東京駅の土俵入り」
大正3年に開業した東京駅。赤煉瓦の丸の内口駅舎は平成15年に重要文化財に指定され、昨年開業100周年を迎えました。
東京駅を設計したのは辰野金吾。明治の日本に西洋建築を取り入れた「近代建築の父」と呼ばれる巨匠です。
重厚かつ優雅な東京駅丸の内口駅舎ですが、その外観は横綱の土俵入りを表している、という説が近年出ています。
東京駅を正面から見ると、丸いドーム屋根は大銀杏で、横に長く伸びる駅舎は両手をいっぱいに広げてぐっと腰を割った低い姿勢。中央入口は顎を上げた顔で、皇居に向かって土俵入りを披露している、という姿なのです。
じつは辰野は大の相撲好きで、大相撲観戦を通じて角界と親しくなり、初代国技館の設計を引き受けています。
また、自宅の庭にバラック建ての土俵を造って、息子たちを相手に相撲を取ったり、宴会で興が乗れば相撲甚句を唸ったり、諸肌脱いで土俵入りの真似事をしたり、さらには、息子たちが高校生になると相撲部屋に通わせ、現役力士を相手に稽古をさせていたという逸話もあります。
それほど相撲を愛した辰野が設計した東京駅。
今となっては本人に真意を聞くことはできませんが、もし土俵入りの姿を意図して設計したのであれば、辰野金吾のその仕事ぶりこそが堂々たる横綱相撲といえるでしょう。
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