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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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11/16「マスカット・ベリーA」

今年も新酒のワインが出回る季節になりました。
ここ日本でもいまは全国各地にワイナリーがあり、味を競っています。
その国産ワインの父と呼ばれる明治の人が、川上善兵衛です。

彼の家は新潟の代々の庄屋で裕福でしたが、村は痩せた土地で稲作がうまくできませんでした。
村人の苦しみを見た善兵衛は、新たな作物の必要を痛感し、葡萄を使ったワイン造りを思いつきます。
彼は私財を投じて欧米からさまざまな葡萄の苗木を取り寄せ、自宅の庭園を壊して葡萄畑にし、日本の風土に合った品種改良に取り組みます。
それは歳月と根気のいる仕事でしたが、失敗を繰り返しながらついに「マスカット・ベリーA」というワインに最適な新しい品種を産み出したのです。

また、ワイン造りでも試行錯誤の末に冬の雪を利用した低温発酵などを考案。
地主も小作人もなく村人皆で葡萄を栽培してワインを造り、その利益を皆で分け合うという画期的な経営をしたのです。
さらに、彼は苦労して産み出した新しい品種を他の村にも次々に無料で分け与えていきました。
そのため、彼の家は破産してしまいます。

晩年、彼はこう語っています。
「財産は失くしたが、葡萄は全国に広まっている。私の努力は報われたのだ」
いま、全国のワイナリーの約6割が、川上善兵衛が産み出した葡萄の品種を使っています。