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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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10/12「時間を売る貴婦人」

1884年10月13日、ロンドン郊外のグリニッジ天文台を通る子午線を経度0とし、ここでの時刻を世界標準時とすることが決定。
この日、初めて世界中の時間が統一されたのです。

グリニッジ天文台の屋上には柱に貫かれた大きな赤い玉があります。
それは昔、天文台で計測した正確な時間を毎日1回知らせていた装置。
12時55分になると滑車を使って玉を柱の上まで引上げ、午後1時ちょうどにストンと柱の下に落とすことで時刻を伝える仕組みなのです。
しかし、これでは天文台が見える場所でしか時刻を知ることができません。
そこで天文台で助手をしていたベルヴィルが、時間を売るという商売を思いつきました。

彼は毎週月曜日に天文台で自分の時計を正確に合わせてロンドンの街に出向き、鉄道関係や時計職人、資産家などを訪ね歩いては正確な時刻を教えるというものです。
彼の死後、この仕事は妻のマリアから娘のルースへと引き継がれていきました。
週に一度ロンドンの家々を訪ね歩き、恭しく銀の懐中時計を取り出して時刻を教えるルースの姿は、ロンドンの人たちの間で「グリニッジ時間の貴婦人」と呼ばれ、親しまれました。

1930年代までこの仕事を続けていたルース。
やがてラジオ局が開業して時報を放送する時代になったにも関わらず、週に一度のルースの訪問を心待ちにする顧客が50軒ほどあったそうです。