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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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7/13「ボッカさん」

夏がくれば思い出す、遥かな尾瀬。
貴重な高山植物などの生息地である尾瀬国立公園は特別保護地区で、車が乗り入れることはできません。
その広い尾瀬の中に山小屋が8軒。
そこで供される飲食物や生活用品は誰がどうやって運んでくるのでしょう。
それはボッカさんです。

「歩く」という字と荷物の「荷」と書いて「ボッカ」。
歩荷さんは梯子のような背負子に自分の背の高さ以上の荷物を積み上げ、それを背負って歩きます。
重さにして70kg。多い時には100kgにもなり、麓の村から峠を越えて尾瀬の山小屋まで一日2往復しています。
尾瀬には現在10名ほどの歩荷さんが働いており、彼らがハイカーたちの山小屋での快適なひとときを裏で支えているのです。

尾瀬を歩くハイカーが歩荷さんに出会って気軽に声をかけても、挨拶を返してくれないことがあります。
それは悪気があるわけではなく、すれ違うハイカーたちにいちいち挨拶を交わすと集中力が乱れ、足元がおぼつかなくなるからです。
そこで、尾瀬では荷物を運んでいる歩荷さんに出会っても無闇に声をかけないことが、暗黙のマナーになっています。

重い荷物を積み上げて背負い、額から汗を流しながら、神経を研ぎすまし、黙々と、ゆっくり、一歩一歩着実に歩き続ける歩荷さん。
彼らこそ、尾瀬の守り神なのです。