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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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6/15「阿蘇の道しるべ」

熊本の阿蘇・高森町は江戸時代から旅人の行き来が多く、栄えた村でした。
広い草原には村々を繋ぐ道がいくつも通っていましたが、夏は先が見えないほど背の高い草が茂り、冬は雪が積もって道が分からなくなります。
旅に慣れた人でも道に迷い、そのまま行き倒れてしまう人もいました。

そんな旅人をなんとか助けたいと思ったのは、この村で暮らす甲斐有雄(かいありお)という男。
生業は石材を切り出して加工する腕のよい石工職人です。
「そうだ、この石工の腕で道しるべを作ろう。雨が降ってもいつまでも残る石の道しるべをあちこちに立てれば、道に迷う人がなくなる」
そう決心した彼は、誰に頼まれたわけでもないのに仕事の合間を縫っては道しるべを作り、村の四つ角や迷いやすい分かれ道に立てていきました。

さらに、道しるべはこの村だけに留まらず、阿蘇から宮崎の高千穂、大分の直入まで広がっていき、奥深い山々の尾根や山頂にも立っていきます。
明治42年に80歳で亡くなるまでの48年間に、彼は1824基の道しるべを刻み続けたのです。

現在もあの地この地で立ち続ける甲斐有雄の道しるべには、行き先案内だけではなく自作の歌を刻んだものが多いのが特徴です。
それは、道を教えるだけではなく、疲れきった旅人の心を和ませ癒そうとする、彼の気遣いなのです。