8/11「昭和17年の球児たち」
今年、第95回を迎えた夏の高校野球。
その歴史は大正時代から続く伝統ある大会ですが、昭和16年から昭和20年までの5年間は中止されました。
それは戦争のためです。
ところが、昭和17年の夏、全国から地方予選を勝ち抜いた16校の球児たちが甲子園球場で一週間の熱戦を繰り広げています。
これは時の政府が主催者となって、国民の戦意高揚を目的に開催した体育大会の一環として行われたものでした。
主催が新聞社ではなく国で、伝統の優勝旗も何もない大会。
そのため夏の高校野球の歴史として認められず、「幻の甲子園」と呼ばれています。
それでも、全力で白球を追い、試合に勝っては抱き合って喜び、負けてはうずくまって泣いた全国代表16校のナインたち。
そして、そんな彼らを応援した超満員のスタンドの観客たち。
彼らにとって甲子園は決して幻ではなかったはずです。
この大会が終わると、多くの球児たちは志願して予科練や海兵団に入り、やがて死を覚悟して戦地へ向かいました。
いま、夏の大会では8月15日の正午に、試合を中断して甲子園にいる全員で1分間の黙祷を捧げています。
それは「幻の甲子園」と呼ばれる、あの昭和17年の球児たちにも向けられているのです。
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