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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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8/18「富士山測候所の父と母」

世界遺産となった富士山。その頂上に83日間籠った人がいます。
野中到(のなかいたる)。
日本で一番高い富士山頂の気温や風を調べれば、天気予報が進歩すると考えた彼は、自ら山頂に小屋を建築。
完成したのは明治28年8月30日のことです。
それから観測の機械や食料を運びこんで準備を整えた後、10月1日から小屋に一人泊まり込んで、毎日2時間ごとに気象観測を行いました。
しかし、これは無謀な試み。一人ではろくに眠ることもできません。

ところが2週間後、思いがけない助っ人が現れます。
それは野中到の妻・千代子。
夫のことが心配で一人富士山を登ってきたのです。
その日から夫婦助け合いながらの気象観測が続きました。

しかし、標高3776mの富士山頂。冬になると、寒さと高山病、そして栄養失調で、二人は歩くこともままならない体になっていきました。
そんな二人が救出されたのは12月22日。
鏡を使って太陽光を麓に反射することで無事を伝えていたのですが、それが途絶えたことから救援隊が向ったのです。
こうして、83日に及ぶ富士山頂の越冬は幕を閉じました。

37年後、気象台の正式な測候所が富士山頂に完成します。
8月30日は「富士山測候所記念日」ですが、これはその測候所ではなく、あの野中の手作りの小屋が完成した日。
明治時代に命がけで気象観測を試みた野中到と千代子の夫婦に敬意を表しての記念日なのです。