3/24「戦地に咲く桜」
太陽の「陽」に「光」と書いて「陽光」。これは桜の品種のひとつです。
25年の歳月をかけて陽光を作ったのは高岡正明(たかおかまさあき)さん。高岡さんは昔、愛媛県の青年学校で教鞭をとっていました。
兵隊に行く前の若者たちに軍国教育や軍事教練を行う青年学校。
高岡さんは、生徒たちに言いました。
「日本は絶対に負けない強い国だ。みんな立派に戦おう!」
そして校庭の桜の木の下で記念写真を撮り、再会を誓って生徒たちを戦地へ送り出したのです。
しかし、終戦後に彼の元に届いたのは、生徒たちの戦死の知らせでした。
「とんでもないことを言っていた。俺が生徒たちを殺したも同然だ」
激しい自責の念に苦しんだ高岡さんは、校庭の桜の木の下での再会が果たせなかった生徒たちの供養のために、彼らが散っていった戦地に桜を植樹しようと考えました。
そのためには、どんな気候の土地でも適応できる桜が必要です。
高岡さんは新しい桜を作るために全国を尋ね歩き、品種改良に没頭。
25年の歳月を費やして、ようやく、病気にも強く、厳しい気候にも耐えうる丈夫な品種「陽光」が誕生したのです。
教え子たちが眠る地に、陽光の苗木が植えられていきました。
高岡さんはさらに、この陽光を平和と友好を担う使者として世界各国に寄贈。平成3年に亡くなるまでおよそ5万本の苗木を無償で送り続けたそうです。
この時期、世界各地の思いがけないところに、大きな花びらで鮮やかなピンクの桜が満開になっていたら、それは陽光です。
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