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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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3/10「ある米兵の東京大空襲」

昭和20年3月10日は、東京大空襲の日。広島、長崎の原爆に先立つ無差別じゅうたん爆撃によって、死者8万人以上、およそ100万人の東京都民が焼け出されましたが、その中になんと米軍兵士がいました。

彼の名前はレイモンド・ハロラン。東京を焼け野原にしたB29の乗組員でしたが、その2カ月前に日本の戦闘機との空中戦で撃墜され、パラシュートで脱出し、捕虜になっていたのです。

ハロランさんは憲兵隊司令部で拘束され、連日厳しい尋問を受けていましたが、そこで3月10日の大空襲を迎えます。
独房の床の上で手足を縛られたまま寝ていたら、焼夷弾が落ちる激しい音。熱風で独房の屋根が炎上しました。
ハロランさんは死を覚悟しましたが、連れ出されて一命を取り留めます。
しかしその後は、動物がいなくなった動物園の檻に閉じ込められたり、食べ物もろくに与えられないまま強制労働をさせられました。

終戦となって晴れて帰国することができたハロランさん。彼にとって、日本は恐怖と屈辱の思い出しかありません。
しかし、彼は晩年になって日本を訪れています。

平成14年、東京都江東区に市民などの募金で作られた「東京大空襲・戦災資料センター」がオープン。そこにハロランさんの姿がありました。
彼はその場で次のような挨拶をしています。
「私は大空襲の夜を皆さんと共有し生き延びてきました。戦争は勝っても負けても双方の心を深く傷つける。だからしてはいけないのです」
その後、彼は平成23年に亡くなるまで、この施設に寄付金を送り続けたそうです。