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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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9/9「静寂の喝采」

今から187年前―1825年の今日:9月9日は、ベートーベンが生涯最後の公演をした日だとされています。

公演―つまり、自分がステージに立って観客に音楽を聴かせることは、ベートーベンにとって特別な意味がありました。
なぜなら、彼は聴覚を失っていたにもかかわらず、自分が作った音楽を観客の前で演奏することにこだわった作曲家だからです。

若き日のベートーベンは作曲をすると、その初演には自らピアノを弾いていました。
耳が聞こえなくなると、口にくわえたタクトをピアノに接触させ、感じ取った振動を感じ分けながらピアノを弾いていました。
晩年になると、今度は指揮者として観客の前に立ちます。

ウィーンで交響曲第9番の初演が行われたのは1825年。
ステージでは54歳になる彼自身が指揮しましたが、じつはもう1人の指揮者が彼の後ろに立ち、オーケストラはそちらに合わせました。
演奏は楽章が進むたびに会場から拍手が沸き、アンコールの声が飛び交いますが、ベートーべンには何も聞こえません。
やがて最終楽章の「歓喜」の合唱が終わると、彼は振り向きもせずに指揮台に立ちすくんだまま。演奏は失敗したと感じているようです。
それを見かねたアルトの歌手が歩み寄り、巨匠の手をとって観客の方に振り向かせました。

目の前には観客の大喝采。でもそれは万雷の拍手ではありません。皆、ベートーべンの耳が悪いことを知っているので、手を振り、帽子を振り、ハンカチを 振って彼の偉業を讃えたのです。