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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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8/12「閉会式の夢」

初めて南半球でオリンピックが開催された1956年のメルボルン大会。
この大会ではもうひとつオリンピックの歴史を塗り替えた出来事があります。

戦後10年経ったとはいえ東西冷戦の中、スエズ危機、ハンガリー動乱が発生するという不穏な世界情勢の中で開かれた大会。
敵対する国同士の試合では小競り合いから乱闘騒ぎになる競技もありました。そんな緊張をはらんだ大会中、オリンピック組織委員会に一通の手紙が届きました。
差出人は17歳の中国系オーストラリア人の少年。手紙には次のようなことが提案されていました。
「オリンピックでは、戦争、政治、国籍をすべて忘れて、1つの国になってほしい。閉会式は五輪というドラマのクライマックス。すべての戦いを終えた選手たちが、垣根を越えて、オリンピックという一つの国家になって入場できないでしょうか」

閉会式。この少年の夢は予告なしに実現しました。
10万人を超す観衆の前に、アメリカもソ連も、男性も女性も、黒人も白人も、すべての選手が渾然となったパレードが繰り広げられたのです。
だれもが楽しげに、満面の笑みで観衆に手を振る閉会式。
それはそのまま世界の友好・平和・調和のメッセージとなりました。
閉会式の入場が国別でなく、各国の選手が入り混じって一体となった形をとるオリンピックは、このメルボルン大会から始まったのです。

そして、44年後。あの手紙の差出人ジョン・ウィンさんは、再びオリンピックが南半球で開かれた2000年シドニー大会の閉会式に招かれ、少年時代の夢の形をその目で見ることができました。