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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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8/19「英国人登山家と日本人猟師の友情」

イギリス人ウォルター・ウェストンは、明治の日本を訪れて信州や飛騨の山々を登り、日本アルプスの名を世界に広めた登山家。
また、狩猟や山岳信仰ではなく、登山そのものをレジャーとして楽しむことを日本に広めた、日本近代登山の父と言われる人です。

ウェストンは、地元の樵や猟師に山案内してもらいながら登山をしましたが、上高地には上條嘉門次(かみじょうかもんじ)という猟師がいました。ウェストンが嘉門次と穂高に登頂したのは明治26年。二人の初対面は登山計画について意見が合わず、感情的対立があったようです。
しかしその後、二人は何度も登山を重ねる中で、悪天候に道を断たれて山中で一夜を明かしたり、足を滑らせて危険な目に合うなど、共に苦労を分かち合ううちにお互いの絆を強めていきます。

嘉門次は幼いころから山を駆け回り、手づかみで捕ったイワナをそのまま生でかじりつく原始人のような人でしたが、ウェストンは嘉門次の山に対する技術と判断力に絶大な信頼を置き、彼の記した本の中で「ミスターカモンジ」の名は日本アルプスの名ガイドとして世界へ紹介されました。

いっぽう嘉門次もまた、英国紳士ウェストンの誠実な人柄を尊敬し、毎年ウェストンが上高地にやって来るのを、首を長くして待っていたといいます。

嘉門次が当時暮らしていた小屋は、いまも山小屋として登山客に開かれています。そこには、ウェストンが日本を離れる際に、嘉門次に友情の証として贈ったピッケルが大切に保存され、遠い明治時代に上高地で芽生えた友情をいまも語り継いでいます。