7/8「一番のいいニュース」
アルゼンチンのプロゴルファー、ロベルト・デ・ビセンゾは、1967年の全英オープンで優勝。
ゴルフ後進国だったアルゼンチンに初めてメジャータイトルをもたらした名ゴルファーです。
あるトーナメントで優勝したビセンゾ。
優勝賞金の小切手を持ってクラブハウスを出ると、そこに一人の若い女性が近づいて彼に話しかけました。
優勝のお祝いを述べた後、彼女は、「実は自分には重い病気の子どもがいて死にかけている。医者に診せる費用や入院費をどうやって支払えばいいかわからない」と告白するのです。
子を思う母親の切迫した思いに同情したビセンゾは、「これが少しでも子どものためになれば」と、獲得したばかりの優勝賞金の小切手をその場で裏書きして、彼女の手に握らせました。
後日、彼はこのクラブハウスの職員から、先日会った女性が実は詐欺師だったことを知らされます。
「病気の子どもなんかいない。彼女は結婚さえしていない。あなたは騙されたのです」
それを聞いて、ビセンゾはもう一度、確認の質問をしました。
「では、本当に死にかけている子どもはいないのかい?」
残念そうに「その通りです」とうなずく職員。
しかし、ビセンゾは逆に笑顔になり、「それはよかった。今週聞いた一番いいニュースだよ」と言ったのです。
彼はゴルフそのものとは別にも、伝説的に語り継がれる名ゴルファーとなりました。
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