5/20「エッフェル塔の伝説」
世界一の高さを誇る東京スカイツリーがいよいよオープンしますが、タワー世界一の元祖といえば、パリのエッフェル塔です。
高さ300mの塔が完成したのは1889年―19世紀のこと。
今でこそ、エッフェル塔はパリのシンボルとして皆から愛されていますが、
建設のときにはその時代ならではの騒ぎがありました。
石造りの建物が広がる街の真ん中に、異質な醜い鉄の塔を建てれば、パリの美しさをぶち壊すことになる、と反対運動が起こったのです。
中でも、作家モーパッサンは大変な剣幕で、他の文化人たちと建設中止の要望書を政府に提出。
ところが、これを受け取った大臣は、モーパッサンの書いた要望書の文章が格調高く美しいと誉め讃え、これはエッフェル塔にとって名誉なことだと、この要望書を完成した塔の中に展示しました。
フランスの気の利いた小粋な精神=エスプリを発揮して、建設反対要望書をちゃっかりエッフェル塔の宣伝に利用した大臣の勝ちです。
でもエスプリという点ではモーパッサンも負けてはいません。
数年後、彼はエッフェル塔の展望レストランで、よく食事をするようになりました。
エッフェル塔を憎んでいるはずのモーパッサンがなぜ?という周囲の声に、彼はこう答えました。
「だって、パリの中でここが、あの、いまいましいエッフェル塔を見なくてすむ唯一の場所だからさ」と。
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