4/15「子どもたちの詫び状」
いまから75年前のきょう― 昭和12年4月15日。一人のアメリカ人女性が来日し、日本の国民から大歓迎を受けました。
太平洋を12日かけて横浜港に入った客船・浅間丸から降り立った女性とは、ヘレン・ケラー。幼いときの熱病がもとで、目が見えず、耳が聞こえず、口がきけないという三重苦の障害を背負いながら、家庭教師サリバン先生の指導のもとに克服していった人です。
彼女の存在は日本でもよく知られていて、国民的な尊敬を集めていました。
ところが、横浜に入った直後の客船待合室で、ケラーの財布と大切な住所録が何者かに盗まれてしまいました。
このニュースが伝えられると、無名の中年男性から彼女のホテルに被害にあった同額の現金が届けられ、それを皮切りに、全国から次々に現金が寄せられたのです。
それ以上に彼女を驚かせたのは、全国の子どもたちからの詫び状― 謝りの手紙が多数送られてきたこと。同情ではなく謝罪なのです。
悪さをした当人や関係者でもないのに、それに代わって無関係の人間が被害にあった人に謝るなど、ケラーにとっては考えられないことでした。
これを知って彼女は、全国から寄せられたお金も、同情からの寄付金ではなく、お詫びの気持ちだということに思い至ります。
そんな日本人の心に触れて感激した彼女は、寄せられたお金を身体障害者の福祉事業に役立ててほしいと寄付しました。
そして自らは4カ月かけて北海道から九州まで全国各地の盲学校やろう学校を訪れては子どもたちを励まし、また障害者の福祉対策の必要性を呼びかける講演をしていきました。
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