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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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10/16「サルが恋した男」

幸せの島と書いて「幸島(こうじま)」??
宮崎・日南海岸の沖合にある無人島で昔から幸せに暮らしているのは、野生のサルたちです。

昭和28年、1匹の小ザルが浜辺でイモを洗って食べ始めたのをきっかけに、
ほかの子ザルたちも真似始め、次第に群れに広がっていきました。
その行動は「文化をもったサル」として世界の動物学者の注目を集めます。
当時、京都大学理学部動物学科の学生だった吉場健二(よしばけんじ)さんもその一人。
彼は昭和33年に幸島を訪れ、
島にあるボロボロの小屋に独り泊まり込んでサルの生態調査を始めました。

毎日サルを追って観察を続けるうち、
一匹の雌ザルが吉場さんの足元ににじり寄ってくるようになりました。
やがてそのサルは吉場さんの肩に上がってくるほどになついてきます。
しかし何か食べ物をねだるわけでもなく、ただ彼にくっついているだけで幸せという雰囲気。
この雌サルに慕われながら、吉場さんは2か月間、幸島で研究を続けました。
その後アジア各国でサルの調査を続けながら研究者としてのキャリアを積んだ吉場さん。
再び幸島を訪れたのは6年後です。

待っていたのは、かつて彼に恋した雌ザル。
あのとき以来、島にやってくる研究者のだれにもなつかなかったのに、
6年ぶりに吉場さんの姿を見ると興奮しながら飛びついてきたのです。
肩の上に乗ってしがみつく雌ザルのせいで泥だらけになった吉場さんのシャツ。
その様子をニコニコ笑いながら見ているのは、新婚早々の吉場夫人です。
「私は知りませんよ。この人にシャツを洗ってもらったら? この人、洗うことがとても上手なんでしょ」
「この人」とはもちろん雌ザルのこと。
じつは幸島で最初にイモを洗って食べた小ザルは、この雌ザルだったのです。