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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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9/4「動物慰霊祭」

昭和18年9月4日。東京・上野動物園で、ある慰霊祭が催されました。
当時の日本は太平洋戦争の真っ只中。
トラやライオンなどの猛獣、ゾウやクマといった大型動物が毒を混ぜた餌で殺されることになりました。
戦争という非常事態とはいえ、愛情を注いで育ててきた動物たちの命を
自らの手で奪わざるを得なかった動物園の飼育員たちによる、動物の慰霊祭なのです。

ところが、この慰霊祭の当日、ゾウの檻は黒と白の幕で囲われ、中が見えないようになっていました。
なぜなら、殺されたはずのゾウが、じつはまだ生きていたからです。
嗅覚が鋭いゾウはけっして毒が入った餌を食べようとはしないので、絶食によって餓死させる処置がとられました。
ゾウの餌を保管する倉庫は閉鎖され、近づくことも禁止されました。
しかし、教え込んだ芸の仕草で無心に餌をねだるゾウに、
こっそり餌を与えずにはいられなかったのが、このゾウの担当飼育員です。

彼は、戦時中の食料不足でひもじい思いをしている自分の家庭の食卓からイモを持ち出して、
こっそりとゾウに与え続けたのです。
上からの命令とはいえ、長年世話をしてきたゾウをどうしても裏切ることはできなかった飼育員。
また、その心情を痛いほどわかっているからこそ、動物園の同僚たちも彼の行為を見て見ぬ振りをし、
慰霊祭のときにはゾウが生きていることがばれないように皆で協力したのです。

数日後、ゾウは鉄の檻にもたれながら死んでしまいました。
動物園の同僚たちは皆あつまり、声をあげて泣きました。
そして叫びました「戦争をやめてくれ」

それから68年。上野動物園ではいまも毎年9月に動物慰霊祭が行われています。