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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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6/19「コロンブスのパスポート」

「昭和37年、堀江兼一さんがヨットでの太平洋単独航海に成功」
……昭和の歴史に燦然と輝く快挙ですが、じつはその当時、堀江さんはヒーローではなく犯罪者と見なされていました。

当時は日本人が海外旅行をしようとしても、簡単にはパスポートが発給されない時代。
堀江さんはヨットでアメリカに渡るという申請理由で正規のパスポートをもらおうと、
あらゆる方法を試みましたが、「そんな前例のない渡航を認めるわけにはいかない」とどうしても受け付けてもらえません。
そこでやむを得ずパスポートなしで出港したのです。

これは法的にいえば、密航。
3カ月後にヨットがサンフランシスコに到着すると、日本の法務省はアメリカ政府に堀江さんを
出入国管理法違反で身柄を拘束するよう要請し、強制帰国の後に起訴する方針を固めます。
新聞も一斉に「無謀で愚かしい行動」だと非難しました。
ところが、アメリカの反応はまったく違うものでした。

サンフランシスコの市長は、週末にもかかわらず大統領と連絡を取り、
堀江さんをサンフランシスコの名誉市民として迎え、歓迎の晩餐会を開きました。
また、地元のヨットクラブは堀江さんに名誉永久会員証と波止場の生涯無料使用証を発行し、
さらにアメリカ滞在に必要な保証人になることを申し出たのです。
小さなヨットでたった一人、太平洋を渡ってきた日本の若者の勇気に感動し、熱烈な歓迎をしたアメリカ。
パスポートを持たない密航者として非難している日本に対して、サンフランシスコの市長は、
「あのコロンブスだってパスポートなしでアメリカにやって来たのだ」と皮肉ったそうです。

堀江さんの小さなヨット「マーメイド号」は、49年たったいまでも、サンフランシスコに大切に展示されています。