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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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2/13「西郷と愛加那」

奄美大島の北部、龍郷町(たつごうちょう)には、西郷隆盛がかつて暮らしていた住居がいまも残されています。

西郷は幕末の一時期、薩摩から奄美大島に流されていました。
国元から遠く離れた絶海の孤島ですが、島の暮らしに徐々に溶け込んだ西郷は、
がて愛加那(あいかな)という娘と出会い、お互い心惹かれていきます。
でも、西郷は、いずれは許されて薩摩に帰る身。
「そんな自分がこの島で妻を娶ることはできない」と思っていました。
しかし、それでも西郷を世話する周囲の者たちの強いすすめに、二人はいっしょになります。
西郷が33歳、愛加那は23歳でした。

二人はとても仲睦まじく、寄り合いの席などで、
西郷が人目もはばからず愛加那のそばに寄り添うので、村人たちは目のやり場に困ったといいます。
また、西郷が小舟を漕いで網を張り、泳ぎの達者な愛加那が魚を追い込むという漁をすることもありました。
のどかな島で愛加那とのひたむきな愛情に包まれた暮らしは、2年余り続き、二人の子宝にも恵まれました。

しかし、やがて幕末の嵐は西郷を再びその渦中へと呼び戻します。
島を去った西郷。
しかし、愛加那は島の掟により、奄美を出ることは許されず、二人の子は薩摩の西郷家に引き取られました。

その後、西郷は維新の立役者となりましたが、明治10年の西南戦争で死去。
いっぽう愛加那は、西郷が残してくれた田畑を守りながら、
一生島から出ることなく暮らし、明治35年に66歳で亡くなりました。
彼女の遺品から、毛髪が発見されています。
西郷との短い暮らしの中で彼女は毎朝、西郷の髪を梳いてあげていたそうで、
その抜け毛をみな大切に保存しておいたものなのです。