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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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2/20「足止めされた列車」

「えびの地震」は、昭和43年2月21日に宮崎と鹿児島の県境にあるえびの高原で起こったマグニチュード6.1の地震。
九州のほぼ全域が揺れ、えびの市の山間の村・真幸(まさき)地区では最大震度6が観測されました。

この小さな村には、熊本と鹿児島を結ぶ鉄道・肥薩線の真幸駅がありますが、
熊本から険しい山を越えてやって来た列車が、このえびの地震のために立ち往生し、
真幸駅に丸一日足止めされることになりました。
列車が動かないとなると、乗客たちのために食料を配給しなければなりません。
しかし、街中ならともかく、山の中の小さな村。
麓の町から食料を調達しようにも、折からの大雪に見舞われた山道は埋もれ、クルマの行き来もできません。
駅の近くに住む人たちが、このことを知り、すぐさま手分けして炊き出しを始めました。
地震で大きな被害を受けている真幸の人たちが、駅に足止めされた列車の乗客たちのために、
真心の食べ物を届けてくれたのです。

さらに、乗客の一人の女性が突然、産気づきました。
このときも、駅前の家から戸板を外してそれを借り、
大人の膝まで積もった雪の中、女性を乗せた戸板を皆で運び込み、
近所の人たちの慈愛の支えで無事出産をすることができました。

えびの地震に大揺れした山間の村の小さなエピソード・・・。
このときの列車の運転士さんが、後にその思い出をこう語っています。
「今なら美談として新聞やテレビの話題になるところだが、当時はこの話は全く知られてないはず。
震度6の地震の直後でも、困ったときはお互い様と、みんなが助け合うのが当たり前だったからね」

それから43年後の現在。
真幸駅には観光列車で大勢の人が訪れますが、今は無人駅で、駅前の集落もありません・・・。