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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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11/7「思い出の五輪旗」

去年、オーストラリアで起こった事件です。
71歳のおばあちゃんが住む家に強盗が押し入ってきたのですが、
そのおばあちゃんが強盗を押さえつけて警察に突き出したというのです。
そのおばあちゃん、じつは元金メダリスト。
1956年のメルボルンからローマ、東京までのオリンピックで
水泳女子100m自由形3連覇を成し遂げたドーン・フレーザーさんです。
「年は取ってもさすが金メダリストは強い!」と警察から表彰されたフレーザーさんですが、
じつは現役時代の彼女は、警察に追っかけられたことがあるのです。

それは1964年の東京オリンピックでのことでした。
競技を終えた彼女は、閉会式の前夜、パーティに出席し、すっかり酔っ払ってしまいました。
その帰り道。
皇居前にずらりと並ぶ万国旗を見て、その中の五輪の旗が欲しくなり、
酔った勢いでポールによじ登ったのです。そこへ巡回中の警官がやって来ますが、
彼女はその警官の自転車を奪って逃げ回ります。
やがて知らせで応援に駆けつけた大勢の警官に追いつめられ、彼女は逮捕されてしまいました。
連行された警察署で身元が明らかになり、厳重注意されて釈放となりましたが、
その翌日、閉会式も終わった選手村にいるフレーザーさんを警察署長が訪ねてきたのです。

「また尋問されるのか」と怯える彼女に、署長はにこやかな顔で包みを差し出します。
そこには「警察署一同から」というメッセージとともに、あの五輪の旗が入っていたのです。

後に彼女は自伝の中で「自分が3連覇した東京大会で、この思い出は涙が出るほど嬉しかった」と語っています。
強盗の逮捕劇は、フレーザーさんの、半世紀を経た、警察への恩返しだったのかもしれません。