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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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11/14「動物ガイドことはじめ」

昭和61年。
北海道の旭川動物園は、来園者の数が減っていることから、
何か新しい試みで人気を回復できないものかと考えていました。
「動物のことを一番勉強しているのは飼育係。
その知識をお客さんに提供すれば、動物たちにもっと親しんでもらえるのでは」
こう考えた当時の園長は、飼育係が動物たちについて
入園者の前で解説をするワンポイントガイドを始めようと提案しました。

ところが、スタッフたちは猛反対。
「動物の世話をするのが俺たちの仕事。人間を相手に話をするなんてとんでもない」
それでも園長は半年かけて一人一人を説得。
ようやく全国でも初めての、飼育担当者がガイド役をつとめて入園者に直接話しかけるサービスがスタートしたのです。

とはいえ、飼育係はみんな職人気質で、しゃべるのが苦手。
喋る内容を予め掌に書いたり、ボードに絵を描いて紙芝居風にしたりして悪戦苦闘していました。
どうしても人前で喋る自信がないヘビ担当の飼育員が、
代わりに入園者の前でヘビを身体に巻き付けて見せたら子どもが泣き出したこともあります。
入園者もそんなサービスに最初は馴染めず、途中で帰ってしまう人もいました。
そこで、ガイドを聞いてくれる客が少ないときは、
他の飼育係が周りを囲んで途中で逃げられないようにしていたそうです。

いま振り返れば随分乱暴なサービスですが、当時はガイドを聞いてくれる人は貴重。
最後まで聞いてもらいたい一心での連携プレイだったのです。
一生懸命動物ガイドに取り組む飼育員の姿は、やがて来園者の共感を呼び、
人間相手に話すことが苦手だった飼育員たちも、
自分が担当する動物のことを人に伝えることの楽しさを実感するようになっていったのです。

このようにして24年前に旭川動物園で始まった飼育係による動物ガイド。
いまでは、全国の動物園に広がっています。