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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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10/31「日本の銀杏」

秋を彩る紅葉。
なかでも銀杏の黄色はひときわ華やかです。
この銀杏を詠ったゲーテの有名な詩があります。

「これは はるばると東洋から わたしの庭に移された木の葉です」
66歳のときに人妻に贈った愛の歌には一枚の銀杏の葉が添えられていました。
実はこの銀杏は、ドイツ人ケンペルによって日本からヨーロッパにもたらされたものでした。

シーボルトより140年余り前に、長崎のオランダ商館付きの医師として来日したケンペルは、
商館長の江戸参府に随行して二度に渡って将軍綱吉に拝謁するなど、日本の見聞を深めます。
そのケンペルが驚いたのが銀杏でした。
「生きている化石」といわれる銀杏のルーツは2億年余り前にさかのぼり、
恐竜の時代には世界で繁栄していたといわれます。
ところがその後絶滅に向かい、中国の一部でわずかに生き残ったものが日本に伝わったのです。

ケンペルは帰国後、日本の銀杏を紹介し、持ち帰った種、ぎんなんからヨーロッパに銀杏が広がったといわれます。
絶滅したはずの銀杏は、ヨーロッパの人々に驚きとともに迎えられました。
その一人がゲーテでした。
ケンペルによって遠く旅した日本の銀杏はドイツの文豪の心をとらえ、
「銀杏の葉」と題された素晴らしい詩の一節となって、再び日本に還ってきたのです
「あなたはお気づきになりませんか。私も一枚でありながら、あなたと結ばれた二枚の葉であることが。」

ゲーテは深く切れ込みが入った葉を愛する想いにたとえ、銀杏に新たな輝きを与えたのです。