8/8「トキの田んぼ」
かつては、日本の里山の空を当たり前のように舞っていたトキ。
でも、ピンク色がかった美しい羽と、のんびりした性格が災いし、
乱獲と環境悪化によって日本の空から消えてしまいました。
絶滅が心配されるトキですが、中国の陝西省(せんせいしょう)洋県(ようけん)には、
今なお多くの野生のトキが生息しています。
その地とほぼ同じ緯度にあるのが、九州・大分県の九重(ここのえ)町。
米と椎茸の産地で、美しい山々に囲まれ、豊かな田園風景が広がっていることでも共通しています。
それならば、この町はトキが生息するのにぴったりの場所なのではないか
??そこで九重町では、50年後あるいは100年後にトキが舞う日を夢見て、その環境づくりに取り組んでいます。
トキは、雑木林をねぐらにし、田んぼのドジョウやカエル、昆虫を餌にする鳥です。
生き物がたくさんいる健康な田んぼ。
それは農薬も機械も使わない、昔の田んぼがトキの生活の場です。
地元の大人たちや子どもたちが参加して、「トキのすめる田んぼづくり」がスタートしました。
指導するのは、昔ながらの米づくりを知る地元のお年寄り。
先生として迎えられたお年寄りは、時代遅れだと思っていた自分の知恵と技が
若い人たちの役に立っている、という喜びで、いきいきと輝いています。
また、子どもたちもそんなお年寄りを尊敬の眼差しでみつめ、
熱心に指導を受けながら、泥まみれになって田植えに取り組んだのです。
50年後、100年後にトキが棲める町をめざして、
お年寄りと子どもたちが一緒になって取り組んでいる田んぼづくり。
その夢は、きっと今の子どもたちから、また次の世代へと受け継がれていくことでしょう。
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