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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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3/14「夢のかけら」

昭和45年の今日??3月14日、大阪で日本万国博覧会が開幕しました。
「人類の進歩と調和」をテーマとする大阪万博は、予想を超える延べ6421万人の入場者を数え、
この記録はいまなお破られていません。

きらびやかなユニフォームを着て来場者に応対するコンパニオンは、パビリオンの華です。
ノリコさんはこのとき二十歳で、ある企業のパビリオンでコンパニオンをしていました。
万博が開幕すると、連日、予想を超えた人また人の波。
ノリコさんは朝から晩まで休む間もなく仕事に追われました。
空き時間に、私も万博を楽しみたい。
とくにアメリカ館で公開されているアポロ宇宙船が持ち帰った「月の石」を見てみたい??そう考えていた彼女ですが、
結局、一度もその機会はなかったのです。

ある日、彼女は会場内に落ちている財布を拾い、本部に届けたところ、
翌日、その落とし主がノリコさんを訪ねてきました。
アメリカからの観光客だという男性は、
「この万博で一番感動したのは、あなたのような正直で誠実な人がいる日本という国」
とお礼を言い、謝礼を受け取ってほしいと申し出ます。
それを頑なに断る彼女に、「せめて記念に」と男性が取り出したのは、小さな小さなガラスのカプセル。
中には黒ずんだ石の破片みたいなものが入っています。
いぶかしげな顔をするノリコさんに、男性はいたずらっぽくウィンクしながらこう言いました。
「これは、じつは月の石なのです」

あれから40年。
60歳を迎えたノリコさんは、そのカプセルの中身が本当に月の石なのか、いまもわかりません。
でもこれは、無我夢中で仕事をして万博を楽しめなかった自分に、
神様がくれた夢のかけらなのだ、と思っているそうです。