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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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3/7「芋代官の決意」

江戸時代、現在の島根県で代官を務めていた井戸平左衛門(いどへいざえもん)は、
貧しい農民から厳しく年貢を取り立てる幕府に怒りを感じていました。

「農民が苦しまないように政治を行うのが代官のつとめではないか」
農民たちは、せっかく採れたお米もすべて幕府に納めないといけないので、
自分たちの食糧がなく、飢え死にする者が後を絶たなかったのです。
平左衛門は、サツマイモを植えている地方では飢え死にする者が少ないという話を聞き、
種芋を取り寄せますが、なかなかうまく育ちません。
「このままでは、また農民が飢え死にしてしまう」

平左衛門は、商人たちに頭を下げて寄付を募り、農民のためにお米を購入しておかゆの炊き出しを行いました。
しかし、次の年、歴史に残る享保の大飢饉が農民たちを襲います。
平左衛門は私財を投げ打って再びおかゆの炊き出しを行いますが、とても間に合うはずがありません。

飢えていく農民たちを救う道は、ただひとつ。それは、幕府に納める年貢米を彼らに分け与えることでした。
平左衛門は幕府から制裁を受けることを覚悟で米蔵を開放。
最後に「私は役人として許されない罪をおかした。だが悔いはない」と言い残し、自害しました。
農民たちは悲しみに暮れましたが、その年の秋、この村の畑で初めてサツマイモが実りました。
それはやがてあちこちの畑に広がり、農民にとって貴重な食糧となっていきます。

まるで平左衛門の命を受け継いだかのように育っていったサツマイモ。
農民たちは親しみを込めて、亡き平左衛門のことを「芋代官さま」と呼び、
その功績をいつまでも語り継いでいきました。