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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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3/21「ワイン作りの父」

マスカット・ベーリーA、ブラッククイーン、ローズ・シオター・・・・。
これらはすべて、ワイン作りに欠かせない葡萄の名前です。
開発したのは、新潟県の川上善兵衛(かわかみぜんべい)さん。
明治時代の幕開けとともに日本の食卓にワインを広めようと、葡萄の栽培に生涯を捧げた人物です。

彼が目指したのは、ワイン作りによって、農民の暮らしが少しでも安定するためのシステムです。
皆で収穫した葡萄でワインを作り、その利益を皆で分配する経営スタイルは、
当時の農民にとっては夢のような話でした。

善兵衛自ら率先して葡萄栽培の手本を見せる姿に、農民からは、厚い信頼が寄せられていました。
それゆえに善兵衛は、より美味しいぶどうを育てようと、10年の歳月をかけて品種改良に取り組みます。
その記録をまとめた「葡萄全書」は当時の農業関係者から大変重宝され、後に「農学賞」を受賞します。

ところが、苦労して産み出した品種を、彼は次々と無償でほかの葡萄農家に分け与えました。
さらに、自分のワイナリーが経営難に陥っても誰一人解雇しなかったことから、
善兵衛はついに破産し、ワイナリーを手放すことになりました。

今やすっかり日本に定着したワイン。
そのおよそ6割は、善兵衛が品種改良した葡萄から作られています。
しかし、彼のワイナリーはなく、彼の名を知る人もいません。
それでも晩年、善兵衛は「財産は失くしたが、私が作った葡萄の新しい品種は日本の各地に広まっている。
それがある限り、私の努力は報われている」と語っています。