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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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11/8「訪問美容」

「訪問美容」という言葉をご存知ですか?
高齢者や障害者など、美容院に行きたくても行けない人のために、
その自宅に出張してカットや髪染めなどを行うサービスです。
その訪問美容の草分けが、横浜で美容院を経営する藤田巌(ふじたいわお)さんです。

彼はもともと、大手コンピュータ会社の営業マンでしたが、定年後の生き方を考えているときに、
たまたま新聞で「92歳の寝たきりの女性が美容師に髪をセットしてもらったら、元気を取り戻した」という記事を読みました。
美容という仕事は、医者にもできないことができる??そう確信した藤田さんは、福祉と美容を組み合わせることを思いついたそうです。
そして、彼は50歳にして美容学校の通信課に入学。
国家試験には3度目の挑戦で合格し、60歳で自分の店を持つという夢を実現しました。
藤田さんが訪問美容で最も大切にしていることは、とにかく相手の話を聞くこと。
お客さんの名前を最低20回は呼びながら仕事をし、同じ目線で会話をすることを心掛けています。

お客さんの一人で、左半身が麻痺し、出歩くのが困難になった方がいます。
その娘さんから訪問美容の相談を受けたときのことです。
大好きだった旅行に行けなくなって母が寂しい思いをしているという話を聞いて、
藤田さんは「それでは、秋のコスモス畑を旅行しているイメージで髪を切りましょう」と提案しました。
やがて藤田さんの手で素敵なショートカットに変身したお母さん。
それから彼女は鏡を見るのが楽しくなって、真っ赤な洋服を着るようになり、
ついには娘さんと4年ぶりの旅行に出かけるほど回復したそうです。

赤字も覚悟で踏み切った美容師への転身。
それでもお金には代えられない喜びがありますと語る藤田さん。
美しくすることで人を元気にする訪問美容の素晴らしさを伝えようと、
忙しい合間を縫って全国各地でセミナーを行っています。