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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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10/18「母になれなかったキリン」

17年前、福岡市動物園にはミナミという雌のキリンがいました。
雄のタカオとも仲よしで、ネッキングと呼ばれる首を絡めあう仕草がとても愛嬌があり、園内でも人気者でした。
しかし、タカオが亡くなり、それから8ヵ月も経たないうちに、今度はミナミが突然亡くなってしまいます。

タカオは老衰による自然死でしたが、ミナミの死因はまったく分かりません。
そこで獣医による解剖の結果、ミナミの胃袋に、お菓子のビニール袋が詰まって死んでしまっていたことがわかりました。
さらにこのとき、ミナミのお腹には9ヵ月になるタカオの赤ちゃんがいたことも判明しました。
小さなゴミが原因で、ミナミとお腹の赤ちゃんまで失ってしまった福岡市動物園。
この悲しい出来事に園内は暗く静まり返りますが、やりきれない思いから救われたのは、一本の問い合わせでした。
それは、このニュースを見た博多区のある家族が、「かわいそうなキリンのお話を紙芝居にして、二度とこのような事故が起きないようしたい」というものでした。

出来上がった紙芝居が福岡市内の銀行のロビーで公開されると、今度はこのニュースが徳島県の小学校の先生の目に留まります。
「ぜひ、この紙芝居を子どもたちの教材に使わせてください」
紙芝居を作った家族にとっても、福岡市動物園にとっても、こんなにうれしいことはありません。
『母になれなかったミナミ』の紙芝居を観た徳島の子どもたちは、次々に感想を口にします。
「ミナミちゃんがかわいそう」「だれがゴミなんか捨てたの」「僕たちが捨てたゴミが、福岡まで飛んでいったのかもしれないよ」熱心な話し合いはクラスの気持ちをひとつにし、その思いはやがて地域のゴミ拾い活動にまで発展していきました。

紙芝居となったキリンのミナミは、いまもどこかの小学校の教室で子どもたちに、ゴミをポイ捨てする人のモラルについて、動物の立場で語りかけています。