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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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8/9「孤軍奮闘ガリ版印刷」

「ガリ版」という言葉を知ってますか?
明治27年に日本で発明され、全国の学校や職場で使われていた簡易印刷機。
正式名称は謄写版(とうしゃばん)といいますが、文字を刻むときにガリガリと音がすることからガリ版と呼ばれ、親しまれてきました。
しかし、昭和40年代からコピー機やワープロの普及に伴い、ガリ版は世の中から消えていきました。
ところが、いまなおガリ版にこだわる全国唯一の印刷会社があります。

兵庫県明石市の「アンドー・トーシャ」。
店主の安藤信義(のぶよし)さんは、昭和35年の開店以来半世紀、毎日机に向かい、ヤスリの上で、ロウで出来た原紙に鉄筆で原稿を書き写し、手刷り謄写印刷機で刷り上げるという仕事を続けています。
一文字一文字、ガリガリと刻んでいくガリ版。
想像するだけでも手間ひまかかる印刷で、商売としてはずっと苦しい日々が続いていました。
ところが、全国唯一のガリ版印刷という珍しさが注目され、近頃は注文が増えているそうです。

「活字になるとだれも読まない文章でも、手書きだと不思議と読まれるから」という理由で、わざわざ遠方から印刷の依頼をしてくる人。
そんなガリ版印刷の本を読んだ中学生からは、「この大好きな手書きの文字だったら、分厚い本でもきっと楽しく読めると思う」という感想が寄せられました。
ガリ版の道具を作るメーカーさえ無い現在ですが、安藤さんのもとには「長い間保管していたが、お役に立つならば」と全国の心ある人から材料や道具も寄せられています。

ガリ版がいまも多くの人たちに愛されているという手応えを感じる安藤さん。
彼の座右の銘は、「ガリ版は、手で刻む言葉」
??手で文字を書くという当たり前のことさえ揺らいでいる現代だからこそ、生涯現役としてガリ版の灯を守り続けているのです。